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災害ボランティアは見た -岐阜県関市災害ボランティアレポート-

  西日本豪雨岐阜県関市では津保川があふれ、住宅浸水などの大きな被害が発生しました。関市は私が一年間の農業研修を受けた際に、稲作を学んだ場所です。妻の実家からも近く、景観の美しい場所であることから度々訪れていました。

 その関市で大雨による被害の情報を聞き、少しでも助けになればと、14日(土)と15日(日)の2日間、現地に災害ボランティアとしておじゃますることにしました。

 主に、14日に災害廃棄物集積場でボランティアとして体験した内容に加え、今後の災害対策について注意すべきことなどを考えながら、レポートとしてまとめようと思います。

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岐阜県関市(地区の○囲みと川の線はおおまか)

西日本豪雨 岐阜県関市の被害状況は

 台風7号や梅雨前線、太平洋高気圧の影響で7月2日ごろから西日本を中心に大雨が続きました。岐阜県では7日に大雨特別警報が発表され、8日午前1時15分に関市下之保と富之保で、記録的短時間大雨(1時間に約100㎜の猛烈な雨)を観測しました。

 その後、午前1時45分には周辺地域の一部で避難勧告が発令、さらに午前2時10分には津保川が下之保で氾濫危険水位に達したことから、午前2時37分、周辺地域の1,921世帯に避難指示が発令されました。

 市によりますと、7月12日までの市内被害調査で、家屋の全壊が3棟、半壊が3棟、床上浸水が385棟、床下浸水が551棟に上っています。

 

岐阜県関市7月13日記者会見資料 災害状況について

http://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000012/12635/2.pdf

 

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氾濫した津保川(7月15日撮影)

ボランティアの受け入れ状況

 関市社会福祉協議会は、9日からホームページなどでボランティアの募集を開始しました。募集開始初日の9日(月)には市内外から159人、その後活動希望者が増えて、私がおじゃまをした14日(土)、15日(日)のボランティア参加者数は、16日現在で公表されていませんが、関係者によると1,000人前後の予想でした。日中の最高気温38℃以上の猛烈な暑さが予想される中で、参加者は被災した住宅の家財の移動や災害廃棄物除去などの作業にあたりました。

災害廃棄物集積場での活動

 参加初日の活動内容は、災害廃棄物集積場でのゴミ分別作業です。関市社会福祉協議会のボランティアセンターで受付を済ませた後、8人のグループとなりました。車を乗り合わせて25分ほど北に走らせ、関市役所武義むぎ事務所に移動。そこで作業内容の依頼を受けるといった流れでした。

 活動場所は中之保グラウンド。臨時の災害廃棄物集積場です。現地に着くとすでに多量の災害廃棄物が積まれていました。

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中之保グラウンドに持ち込まれた災害廃棄物(7月14日撮影)

 廃棄物の山の中には、分別されず混合ゴミとなっているものがあり、ボランティアはゴミの分別を行いました。

 ここでの分別は11種類です。可燃ゴミ不燃ゴミ、木材、金属類、プラスチック類、陶器・ガラス類、家電、ふとん、ソファなどの家具類、危険物、コンクリート・アスコンがらに分けます。

 酷暑の中で日陰がない上に、腐敗臭、消毒剤、ほこりと大変な環境です。15分〜25分ごとに声をかけ合って水分補給をするなど休息を取っていましたが、足をつるメンバーが出るなど厳しい作業でした。

現場にリーダーが不在 集積場は非効率に

 問題は、集積場に廃棄物分別の方法を指示する職員(リーダー)が不在であることでした。現場には関市の職員が3人配置されていたものの、普段の業務はまったく別で専門外です。無理な状況かもしれませんが、住民やボランティアに対して適切な指示ができている様子はありませんでした。

 廃棄物を直接持ち込んだ住民に対して、どのゴミをどこに置けば良いのかを指示できない。さらに、分別をするボランティアに対してどのゴミがどの種類で分けられるのかを指示できない。結果的に廃棄物処理の効率が悪くなっていました。

迅速な処理のためには計画に基づいた対応が必要

 災害廃棄物を持ち込むルートは二つに分かれていました。一つは住民などが直接集積場に持ち込むもの。もう一方は、地域の建設業組合のメンバーが被災住居から収集したものを持ち込むもの。

建設業組合のメンバーが持ち込むものは、廃棄物処理の知識があるのか、または災害から数日間が経ち作業に慣れているのかで分別がスムーズでした。(木材なら木材を集めて地域を回るなどという方法を取っていた)

 一方で、住民が直接持ち込む廃棄物は、分別がほとんどされていないか、うまく分かれていなものが多くなります。被災をしてあらゆるものが水や泥に浸かった状況です。住宅から除去する段階できちんと分別することは不可能でしょう。従って集積場では、おおまかでも分別の方法を知る職員が住民に対して分別方法を指示し、ボランティアが協力をするという流れが必要だと感じました。

 また、ボランティアに対しても適切な指示がなかったため、何をどのように分けたら良いのか分かりにくい状況でした。一度分別したものを再度分別するなど、手間と時間がかかっていたのです。

教訓は生かされたか 災害廃棄物処理計画を再確認すべき

 後にインターネットで調べると、関市災害廃棄物処理計画が公開されていました。そこには、東日本大震災の教訓を生かして、災害廃棄物の処理に関する知見を高めるために職員を研修会に参加させるとともに、被災自治体に派遣した職員などをリスト化して有事に備える趣旨の言葉が書かれています。

 また、同計画の43、44ページには一次仮置場の運用について記載がありますが、ここに記載されている内容がきちんと運用されていたのか疑問です。置き場に配置された職員がこの内容を確認していたのかも疑わしいという状況でした。

 

 活動を通じ、被災した住民や地域全体で復旧作業を進める上で、災害廃棄物の処理は大きな問題となることを痛感しました。ゴミが片付かないと次に進まないのです。実際に集積場では、日を追うたびにゴミの量が増えている状況でした。

 2011年の東日本大震災を教訓に、自治体では災害廃棄物の処理計画が策定され、その内容が公開されています。非常時の迅速な対応をするには事前の計画や理解が必要なことは言うまでもありません。さらに計画に基づいた適切な行動も必要になります。

 私たち住民も災害廃棄物の仮置場にはどこが想定されているのか。どういった流れで処分されるのか事前に確認しておくなど、非常時に備えた行動が必要だと感じました。

 

■関市災害廃棄物処理計画

https://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000012/12337/saigaihaikibutu.pdf